携帯は新しくなった、見た目には大きな違いはないが
確かに以前の彼女とは違うのは確かだ
私はあれから数日間、彼女のいない日々を過ごした。
どこに行くにも一緒だったころを思い出すと、右ポケットがやけに軽く感じる
いつも彼女はそこにいたのだ。
赤みがかった強い橙の空が、私を優しく照らす
イヤホンから流れる音楽はとても愁いを帯びていた
もちろんその音楽にしたのは私自身なのだが
それもこれも、彼女への届かない想いを形にしたかったのだ。
彼女を失って、たくさんの感情が渦を巻いていた
大切にしてあげられなかったことや、時には言うことを聞いてやらないこともあった
何度も断る私に対して、彼女がいったいどんな気持ちでいたのか――
お店に行く日の真夜中、私はほんの少しの希望を持ちながら充電をした
数十分たった頃だろうか
聞き覚えのある音が聞こえた、彼女だ
慌てて私は手に取りあらゆるボタンを長押しする
反応はなかった
空耳だったのだろうか……私は酷く肩を落とした
それからまた数十分した頃に、また音がなる
やはり先ほどの音は彼女の声だったのだ
今度こそとまた起動を試みると、半分だけ薄らと光がついた
私は部屋を暗くし、半分だけ見える画面でなんとか操作する
明るい部屋ではほとんど肉眼で確認をすることができないぐらいの画面なのだ
急いでバックアップをとる、すべての情報よ生き残ってくれと願いながら
万が一のために、ゲームアプリのデータ移行のための作業もとる
しかし彼女の力は徐々に弱まり、だんだんと画面が暗くなるのがわかった
画面が見えている時間はそう長くないと、頭ではわかっていても
半分しか見えない画面では作業が順調にはいかない
画面の見えない部分は
写真のデータだけでも生き残ることを信じ、私はスクリーンショットをとった
そしてバックアップを念入りにとり、彼女を横に眠りについた。
目が覚めた時には、彼女に光はなかった。
そして私はお店へ向かい、新しい子を迎えたのだ。
彼女のバックアップは無事成功していた
新しい子は少しだけ体が丈夫で、水に強いらしい
彼女はまだ私のそばにいる
幾度となく、充電をして起動を試みるが
あれ以来彼女が光を取り戻すことはなかった。
あの時、私にバックアップをする時間を少しだけ与えてくれたのだ
大切にしてあげられなかった私にたいして、彼女は私に時間をくれた
水につけてしまった私に――
彼女、iPhone6にたくさんの感謝を伝える。
そして新しく私の元へ来たiPhone7には、これから宜しく、と。